そのまま暗い町へ降り街道に入る。この道をずっと辿っていけば、イロットまで行けると聞いた。しかし身を隠すなら山の方が安全そうではある。どちらへ向かったのか、それらしい痕跡も見当たらない。息を吸って、長く吐き出す。辿ることのできる痕跡はあるだろうか。
北へ行くか南へ行くか。迷った少女の背に、声がかかる。
「よう、こんな時間にそんなカッコで出歩くのはよくないぜー」
「トリベノ、さん……」
「何事? これからちょっと出かける風には見えないけど」
口を閉じたオウに、トリベノは腕を組んで宙を見る。
「もしかしなくてもタイハクか? アイツもうバレたの?」
「トリベノさんは、どうやってタイハクのことを知ってたの?」
「本人が話したわけじゃないんだよ。ちょっと特殊な伝手があって、調べる機会があってな」
「ふーん、そう……」
「で、オウちゃんはどうするんだ?」
「私は……タイハクに用事があるから追いかけないと。どっちに行くか分からないけど……」
「それなら西都だろ。山の方が身は隠しやすいが……馬がいるからな。あれに山道は無理だ」
「そう、なんだ」
「んじゃ西都まで行くのかよ?」
「そうね、そうよ。トリベノさん、あなた西都までの道を知っているのでしょう。案内を頼めるかしら。もちろんただってわけじゃないわ」
そう言ってオウは革袋をトリベノに差し出す。中を改めた彼は瞬きを繰り替えしながら顔を上げた。
「こんなのどこから?」
「女の人がたくさんいたもの。アクセサリーは高く売れたわ。櫛もウケがよかったわね」
「ははぁ、なるほどな……いいとこのお嬢さんだろうに、そういうのに執着はないってか」
「元々それ用よ、きっと。今の私には必要ないだけ。それで、どうかしら」
「いいぜ、乗った。俺だってちと用事があるからな。ついででいいなら、案内するぜ」